2005年9月号
患者さんにとって最先端医療とは
 皆さんは先端医療という言葉を聞いたことがありますよね。遺伝子治療とか幹細胞移植などを難病治療に使うという最先端とされている医療です。いかにも医療の最先端を行く、どんな病気でも治ってしまう医療と勘違いしてしまうのではないでしょうか。ところが、今先端医療などといわれて、難しそうな名前がついた医療と同じようなことが、すでに未開発地で昔から行なわれていたという現実がある、というのが今月のテ−マです。
 大学病院や大病院に行くと「先端医療研究チ−ム」というプレ−トを誇らしげに胸につけた医師達がかっぽしている姿を目にします。「私たちは医学の最先端をいっているのです。」と言いたいのでしょう。患者さんも「へ−、ここの病院ならば最先端の医療が受けられるのか」と勘違いしてしまいます。しかし、そんな最先端医療を果たして何パ−セントの患者さんが必要としているのでしょう。ほとんどの患者さんは最先端医療ではなく、今までの通りの医療で「医師にしっかり診てもらえば十分」「医師にしっかり治療してもらえば十分」と思っているのです。
 私が思うに、大学病院や大病院の幹部は結果がハッキリ出ていない先端医療に血道をあげるのではなく、若い医者を「患者さんの話をじっくり聞ける」「しっかり患者さんを診れる」「患者さんに正しい治療ができる」という、「医療ではなにが重要か」という根本がわった医師に育てるように力を注いでほしいと思うのです。
 では、今の先端医療というものの現実とはどういうものでしょうか? 極端な例ですが、実際にあった話です。先端医療とは自分では何の研究もしていないのに他人が研究発表した論文を数多く読みあさって、それをあたかも自分の研究実績のように発表し、自分は先端医療の権威であるというように演出してしまうのが得意な某有名私立大学の教授が大きな顔ができる分野なのです。なぜなら、最新の医学の分野なので、他大学ではそれぞれが得意な部分部分の研究しか進んでおらず総体的なことはまだ未解決なのですが、あたかもその教授が全てを突き止めているという態度に出ていて他の大学の教授達を騙しているのです。医学ってそんなことができちゃう不思議な面があるのです。でも患者さんにとってみたらそんな教授に診られても迷惑ですよね。
 これも本当にあった話ですが、先端医療のメッカだからと言われてそんな大学病院に行ってしまった気の毒な患者さんがいました。医者はその都度その都度他人の書いた論文をあさって事を進めるのです。この論文にはこのように書いてあるからこの治療法が良いと副作用も考えずに最新治療法を施してしまうのです。副作用が出たら大変です。「おかしいな。文献にはこんな副作用があるとは書いていないのに、きっとあなたの体質が悪いに違いない」と決めつけます。一方、昔ながらの治療法に対しても文献を探します。「この文献にはこの治療法には30万分の1で副作用があるからこの治療法は使えない」と医者は言いました。「でも先生!一人に副作用が出たけど、他の29万9千999人には効いたのですよ。私はそっちの治療の方が良いです。」と患者さんの信頼を全く失う結果になってしまったのです。
患者さんが必要としている医療というのは文献探しではないのです。患者さんの苦痛をとることです。患者さんの話をよく聞いて、診て、治療することです。先ずはそのような医学教育を行なってからさらにその時代にあった先端医療を研究するべきなのです。
 くだらない前置きが長くなりましたが、本題に入ります。アフリカの原住民はヘビに咬まれたら、傷に自分の血をかためた血餅を塗り、その上から包帯を巻いておくのです。4〜5日して包帯をはずすと傷がすっかり治っているのです。このような不思議な治療法が昔から受け継がれているのですが、これこそ先進国で今研究されている先端医療と同じなのです。なぜなら血餅の中には、今先端医療として盛んに研究されている幹細胞、各種のサイトカイン、色々な成長因子が含まれているのです。これが傷を早くきれいに治すということをすでにアフリカの原住民はすでに知っていたということはオドロキです。原住民に言わせれば「お前ら、先進国などとえばっていても、俺達が昔からわかっていることを、今頃になって研究してるんか。バッカじゃないか。」ということでしょうか。
 何度も言いますが、大学病院や大病院はアフリカ原住民が昔からやっていることを先端医療などといって研究するのは別にして、肝心の医療の原点「患者さんを良く診て、正しい治療を行なう」ということを忘れないで日常診療に当たってほしいものです。最近の病院の医師は「患者さんの病気を治す」「患者さんの命を助ける」ということを先ず考えなければならないという自覚に乏しいのが多いという気がしてならない昨今です。
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