2004年8月号
美容外科業界は広告戦争!(あえて業界という言葉を使いました) そのB
 6月号・7月号では「広告宣伝に書いている事を鵜呑みにしては危険です」という話をしましたが、今回は「テレビ放送の内容がいかにいいかげんか」について斬りました。 
 最近の話ですがあるテレビ番組で、某国立大学の形成外科がはじめた「脂肪注入の時に、脂肪を幹細胞と共に注入すれば脂肪の生着率が上がる・・・」などという謳い文句の脂肪注入法を取りあげていました。国立大の医師たちがあたかも「最先端医療です!」と言わんばかりのパフォーマンスをしながら手術をしている映像、素人が見たらコロッとだまされてしまう内容でした。しかしそれは真っ赤なウソ、「どれが幹細胞だというんだ!素人をバカにするのもいい加減にしろ」と私はハラワタが煮えくり返る思いで見ていました。というのも幹細胞は実際にはそんなに簡単に採れるはずがないのです。この幹細胞というのは現在難病とされている多くの疾患を解決しうる神秘の細胞です、医師ならばその神聖な幹細胞をそう簡単に安っぽいウソの広告宣伝のネタに引き出さないで欲しいものです。
 またその番組の司会者が一緒になってお先棒を担ぎ「幹細胞を同時に移植するという方法があるのですね。これは素晴らしい技術だ。」などと言って、要するに視聴者をあざむく共犯者になっていたのです。テレビ局側は視聴率稼ぎにやっきになっていて、ウソも本当もわからず「国立大学なら間違いないだろう」と真偽を良く確かめず放映したのでしょう。ちょっと専門家に聞けばわかるものを、そんなわずかな確認も怠ったのです。国立大学側も独立法人化されたので大学経営に四苦八苦していて、美容外科でもやって一儲けしようとしたのでしょう。このように国立大学側とマスコミ側との利害が一致してこのような事になったと思われますが、それを信じて患者さんになった人は気の毒だと思います。なぜなら、脂肪注入にしろ脂肪移植にしろ今やどこの美容外科でもやっていることで、脂肪はそんなことをしなくても普通に移植すればちゃんと生着するのです。今でも形成外科医の一部には、脂肪注入について勉強した事もなければ、やった事もないのに、「脂肪は生着しない」と意固地になっている医師がいるので、形成外科としては脂肪注入や脂肪移植をおおっぴらに宣伝できないという苦しい面もあったのでしょう。そこで、恐れ多くも黄門様の印籠でなく幹細胞を持ち出してきて、「脂肪は幹細胞と一緒ならば生着する」とぶちあげたのです。もしかすると、脂肪注入の費用だけでなく幹細胞の採取料とかいって、ありもしない手技料金も上乗せされているかもしれませんね。確かに「幹細胞・・・」といえば新鮮味もありますが、あくまで宣伝手法ですから、選ぶ側の患者さん達は要注意してください。
 また幹細胞に関する最新情報として、難病の治療で幹細胞移植を受けた患者さんの中に白血病を発病した人が数人いたというニュ−スがありました。どんな最新の治療法にも未知の部分はつきものです。もし美容外科手術で本当に幹細胞を移植してしまい、万が一白血病になったなんていったらそれこそ大変です。患者さんも「国立大学だから・・」「大手だから・・」といって全てを鵜呑みにして信用してはいけないってことです。

 私は、今の医療において「患者さんの幸せは何か」という医師にとって一番大事な命題が忘れられているのではないか思う時があります。特に美容外科業界では、医療の質ではなく利潤を追求するだけの商売をやっている所があります。そんな所がいわゆる大手と云われているのです。
Copyright (C) 2004 Yoshizawa Clinic. All Rights Reserved.